新島襄の生涯
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信じて疑わない。( (教育は実に一国の一大事業である。国民がこの一大事業を無頓着にまた無気力にただ政府の手にだけ任せておくのは、依頼心のもっともはなはだしいものであって、非常に嘆かわしいことである。およそ一国の文化の源は、決して短期間に生じたものではない。( 5.教育の弊害( 教育というものは人間の能力を発達させるだけでなく、あらゆる能力をまんべんなく発達させるようにしなければならない。いかに学問や技術が優れていても、その人間が意志の弱い人物であれば、一国の運命を担うべき人物とは決して言えない。もしも教育方針の的が外れているために一国の青年を歪んだ鋳型にはめこんで片寄った人物を養成するようなことがあれば、教育はその国を滅亡させると言うべきであろう。 6.一国の良心( ((一国を維持するのは、決してニ、三の英雄の力ではない。実に一国を形成する、教育があり、知識があり、品性の高い人たちの力によらなければならない。これらの人たちは 一国の良心」とも言うべき人たちである。そして私たちはこの 一国の良心」とも言うべき人たちを養成したいと思う。私たちの目的は実にここにある。( 諺にはこうある。 一年の謀 はかりごと)は穀物を植えるにあり。十年の謀は木を植えるにあり。百年の謀は人を植えるにあり」。( ((思うに私たちの大学設立のような事業は、実に国家百年の大計であり、なんとしてもとりかからねばならない事業である。 現代語で読む新島襄」丸善(2000(年 P.213~225(より抜粋)

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